赤ら顔
ネームクリーム®について
何らかの原因で拡張した毛細血管にはレーザー治療が行われることが多いですが
レーザーによる血管収縮は一時的で、かつ効果はレーザーが到達した深度までしか及ばないので、時間とともに再度血管拡張がおこることが多く、予想した改善効果が得られないことがよくあります。
またレーザーにより破壊された血管を修復する過程においても炎症が生じて、赤みが増すことがあります。
これを避けるために、血管収縮作用を持つ外用剤を塗り続けて薬剤を皮膚に蓄積させることで血管収縮を起こさせつづけ、拡張した血管の上流から長期的に収縮させて、一帯の血管を血流量の少ない状態へ作り替える治療を行っています
症例1 いわゆる生まれつきの赤み「幼稚園の頃から両頬全体が真っ赤なまま」
(注意)
医師による正しい検査に基づく診断の上での治療が前提となります。
治療によって、同じ効果が必ずしも得られることを保証する物ではありません。
他院で同じ治療を受ける事は出来ません。
患者は10代後半の女性です。
この疾患は思春期になるまでに徐々に軽快すると考えられていますが、全く良くならない事があります。
30-40代になっても、あるいは80歳以上になっても同じ範囲で赤みが見える事があります。
治療前です。左が通常、右がデジタル処理による赤み強調画像です。
強調画像は一定のアルゴリズムで処理されており、これ以降の画像も同じ条件で処理されています。「カメラで見ると、こう見えている」位に考えていただければよいかと思います。
デジタル処理をすると、赤みが平行四辺形のような角張った印象で、上下に広い事が分かります。
額部や、口の周り、鼻の周りには赤みが出ない特徴があります。横から見ると耳の前の部分は赤くない事があります。
保護者にもお話しした後に1日2回、ネームクリーム®の外用をしました。
外用開始後2週間目で、すでに少し赤みが取れているのが分かります。
(同条件での撮影、デジタルフィルタの処理方法も同じです。)
外用開始後4週間目です。ほぼ赤みを感じないレベルだと思います。
外用開始後8週間目です。外観上の赤みは全て消失しました。
基本的にこの状態まで来ると再発はありません。
(医家向け)
この患者はいわゆるErythromelanosis follicularis faciei のうち、皮膚炎は既に治まり、経過中にmelanosisが生じなかったtypeか、それに似たcongenitalに皮膚炎を生じず血管網形成だけが強いtypeと思います。
皮膚炎が強い場合は無効ですが、炎症さえ治まっていれば血管収縮後に過形成された血管がapotosisを起こし、赤みが短期間で減少します。お気軽にご紹介下さい。Salmon Patch, Port Wine Stainの場合は再発をおこして治癒しませんので、引き続き色素レーザーを使用します。
解説
ネームは血管拡張を起こさせる物質のもととなるアルギニンの類似物質で、塗る事により血管収縮させる働きがあります。炎症を抑える作用もありますが、ステロイド剤や、既存の非ステロイドに分類される抗炎症剤ではありません。もともとはアトピー性皮膚炎の治療薬として使用されましたが、赤みは取れるものの炎症を抑える力が強くなかったために使用されなくなりました。しかし、炎症さえ強くなければ赤みは消えてくれますし、また炎症を伴わない赤みに関してはこれ以上良い外用薬はないと考えています
ネームを配合した外用薬をネームクリーム®と呼び、当院で自家調剤しています。(健康保険の対象外です)
(対象疾患と状態)
・生まれつき両頬が赤い状態
・アトピー性皮膚炎、およびそれが治っても赤みだけが続く状態
・ケガの後の赤み
・弱い脂漏性皮膚炎
・普段は赤くないが、寒くなると頬のほてりがでる場合
など
(注意)
医師による正しい検査に基づく診断の上での治療が前提となります。
治療によって、同じ効果が必ずしも得られることを保証する物ではありません。
他院で同じ治療を受ける事は出来ません。
治療にかかる費用は保険治療の対象外で、金額は疾患と範囲と個人差がありますので治療前に分かることはありません。