更年期治療
更年期症候群への積極的な治療が広く行われるようになりました。
概要
更年期とは性的成熟状態から卵巣機能が完全に消失するまでの期間である、とWHOは定義しています。
女性は四十代にはいると卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)が徐々に減少し、閉経を迎えます。
この期間を更年期と呼びます。
閉経は卵巣の機能停止と廃絶を意味し、日本人女性においては45-56歳頃のことで、更年期はこれ以前から始まる、幅のある期間といえます。
平均寿命から考えると、明治時代まではほとんどの方が更年期を迎えないうちにお亡くなりになられていました。
しかし、現在の女性50歳の平均余命が36年であり、閉経を迎えた後も4割の寿命が残っています。
早くから、更年期時の治療を考えておく事が必要と考えられています。
なお、いわゆるホットフラッシュ(顔面紅潮)は20代後半から始まることが知られており、これらの患者においてはエストロゲンの低下などの検査異常がないことが分かっています。ホルモンの値というのはあくまで血液中の濃度の話で、これが実際に作用するには受容体の調節機能が関係しているので、総合的な反応と検査で出てくる濃度とは必ずしも関係があるわけではありません。
老化とともに受容体の機能が衰え、これを補うためにエストロゲン量が増えることもあります。
更年期女性のホルモン変化
原始卵胞の減少と共にFSH分泌は増加しますがLHは増加しません。
GnRHの分泌周期が短くなり、排卵性月経が減少ます。
また、卵胞期が短くなり、卵巣から分泌されるホルモン群も減少します。
エストロゲン、プロゲステロンは著しく減少し、アンドロステンジオンも低下することが知られています。
エストラジオール(E2)は閉経前に50pg/ml程度ありますが、閉経数年以内に3分の1にまで低下してしまいます。
このE2の現象は血管運動神経症状である「ほてり、のぼせ(Hot flush)」を引き起こし、大きな問題になります。
これらは神経型一酸化窒素合成酵素の急激な減少に伴い発症するとかんがえられています。
またE2の減少は分泌物現象から膣の乾燥を引き起こします。
他には鬱傾向を示すようになること、骨塩量の低下をおこします。
しかしエストロン(E1)は年齢に伴って低下はするが閉経後も閉経前とあまり変わらない事が知られています。
E1は主に末梢脂肪組織でアンドロステンジオンから変換されて産生されます。
アンドロステンジオン自体の量も減少するが変換効率が上がると考えれています。
しかし、エストロゲンの作用活性はE1:E2:E3=10:100:2であるため、エストラジオールの減少が一番の問題となります(注:E3はエストリオール)。
卵巣からのテストステロン分泌は閉経後も維持されます。
そのため、閉経後の婦人であってもいわゆる「ふきでもの」は生じます。
甲状腺ホルモンは年齢依存に低下するのみで、閉経以後も急激な変化はないことが知られています。
副腎由来のDHEASは閉経と関係なく年齢依存性に思春期以降徐々に減少します。
65歳以降の老年期女性に投与すると鬱症状が弱くなる事が知られており、鬱病との関連も示唆されています。
治療の概要
女性ホルモンの皮膚貼付剤を使用することが多くなりました。
数日でホットフラッシュの軽減が得られることもあり、第一選択と思われます。
基本的には40歳以上で乳がん子宮がん検診を定期的に受けている方が対象になります。
乳がん子宮がんの罹患中並びに、切除後ホルモン療法中や血栓性静脈疾患、脳梗塞・心筋梗塞などの血栓症の方、肝機能障害の強い方は使用できません。不正出血のある方は婦人科で原因を精査されてからが望ましいです。
子宮筋腫、子宮内膜症、高血圧、糖尿病は悪化する可能性があり、注意が必要です。